正規品を正規の販売店で買いましょう
偽ブランドを販売すると商標権侵害罪1が成立します。しかし、例えばエルメスとは無関係のバッグを買ってきて、エルメスのロゴを貼り付け売ったら、それはそもそも詐欺罪2になるのではないでしょうか。なぜ、偽ブランド事件の多くが詐欺罪ではなく商標権侵害罪になっているのでしょうか。それは、商標権侵害罪の方が、証明が不要で罪も重いからです。
詐欺罪は最長で10年の懲役刑なのですが、商標権侵害罪は最長で10年の懲役刑に加え、さらに犯人に最大1000万円の罰金、法人に最大3億円の罰金3まで科されるのです。さらに、詐欺を主張するにはさまざまな証拠を揃えて犯人に騙す意思があったことを裁判所に認めてもらう必要があるのですが、商標権侵害罪は登録商標をその指定商品に付けて販売したという事実だけで、犯人の心理的な内情にまで踏み込まなくても罪が認められるのです。
商標登録は、特許庁に必要な書類を揃えて審査にかけ、登録料4を納付することで受けることができます。登録料は税金ではありませんから、経費計上が可能ですし、納付しなかったからといって追徴されるようなものでもありません。登録料の未払いがあれば、単に「料金不納」により商標権が消滅するだけです。ちなみに、商標登録出願に必要な審査手数料は12,000円から、商標権の登録料は最も小さい権利範囲で28,200円で10年間効力を発揮します。
特許庁への手続は弁理士または弁護士に代理をお願いすることができますが、もちろんご自身で行うことも可能です。しかし、仮に商標登録を受けても特許庁や警察が自動的に取り締まってくれるわけではないので、必要なパトロールや証拠集めの方法、提訴や刑事告訴をするためのコネクションを持つためには、弁理士または弁護士に「強くて実際に役に立つ商標登録」を受けておいてもらうことが必要です。
商標権は、ビジネスパートナーにライセンスをしたり、ときには刑事告訴をちらつかせるための抑止力に使ったりするものです。強くて実際に役に立つ登録を受けるためには、貴社がどのような商品・サービスに、どの商標(名称・マーク)を使用して、将来的にどのような事業展開を図っていく計画なのか、それらの展望や願望も含めて弁理士に伝えられるように事業内容をもう一度整理し直されるとよいでしょう。
この記事は、大阪・西梅田でフィラー特許事務所を経営する弁理士・中川真人によって書き下ろされています。特許や商標に関する情報は知的財産法の専門家である弁理士による記事をご利用ください。
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